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[食 Vol.39] 佐伯市蒲江(さいきしかまえ) / ジンガラガッサ(ギンタカハマ)」

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佐伯市蒲江(さいきしかまえ)

ジンガラガッサ(ギンタカハマ)

Vol.39
大分県の南部に位置する佐伯市の沿岸部は、リアス式海岸が続き、瀬戸内海からの海流と黒潮がぶつかりあう豊後水道に面し、「佐伯の殿様浦でもつ」と言われるほど、魚介類に恵まれ、日豊海岸(にっぽうかいがん)と呼ばれています。

 今回は、魚介類の宝庫佐伯市の蒲江を訪ね、磯の香りが高い貝類に注目してみました。
 貝類は、主に二枚貝の斧足類(ふそくるい)と巻き貝の腹足類(ふくそくるい)に分けられます。斧足類では、雛祭りにつきもののハマグリ(蛤)、潮干狩りの定番アサリ(浅蜊)、冬の鍋に欠かせないカキ(牡蛎)などがあります。一方、腹足類は、高級食材のアワビ(鮑)、よく壺焼きにされるサザエ(栄螺)などが代表格です。
 蒲江でもアワビやサザエをはじめ、特産のヒオウギガイ、サムライギッチョ(マガキガイ(籬貝))、アカニシ(赤辛螺)など獲れる貝の種類は豊富にあります。その中で、有名ではないが、美味しさを知る人ぞ知る貝、「ジンガラガッサ」について、地元で磯物の取扱いと民宿を営む有限会社丸二水産(まるにすいさん)の橋本正恵(はしもと まさえ)さんに話を聞きました。

 昔話に、「貝の浜焼きを楽しむ子どもを食べようと姿を消し山から下りた鬼が、浜焼きの香りに惹かれ、貝を先に食べるとあまりの美味しさに夢中になった。焼けた貝が空に上がり中身が無くなる不思議な現象に騒ぐ子どもを、遠くから見た大人が、姿が見えると言われる網の目から騒ぐ子どもの方を見ると、貝を食べる鬼を見つけ、ホラ貝で子どもを呼び返し事なきを得た。」とあるほど、この一帯で採れる貝は美味しいと言われてますので、ジンガラガッサの美味しさも是非知ってほしいとのこと。

 ジンガラガッサは地域の呼び名で、ジンガラとは、形が戦国時代の陣笠に似ている、ガッサとは、沢山という意味です。一般的にはギンタカハマ(銀高浜)と呼ばれ、5〜6cm程で、浅瀬の岩場や海底でよく採ることが出来ます。身を抜く作業など調理は大変ですが、小粒ながらプリプリした身は絶品で、刺身でもゆがいても美味しく、酒のつまみなどに最適です。

 地域の人達から「まぁ姉」と親しまれる橋本さんは、県域を超え宮崎県との地域おこし「東九州伊勢えび海道」に取り組んでいますが、息子の幸則さんも、鮮度の良い魚を消費者に届けたいと若手漁師10人で設立した(株)かまえ直送活き粋船団に参加するなど、家族で地域の活性化に取り組んでいます。なお、船団では、新鮮なブリなどを特性のタレに漬け込み、熱々ごはんにのせ、お好みでお茶をかける漁師料理の「熱めし丼」を商品化し、1月に東京ドームで開催された「ご当地どんぶり選手権」では3位入賞しています。

 坐来大分では、2月17日からのメニューに、美味なジンガラガッサのメニューのほか、〆の逸品にぶりあつ飯もお楽しみいただけるよう準備しています。是非、ご賞味ください。(天候等により入荷がない場合もあります。)

〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉

 八才のことだったと思います。近所のお姉さんに誘われて近くの海へ潮干狩りに行きました。その日、どうしたことか滅茶苦茶に沢山採れたのです。子どもの足で50分位の道をかごを引きずるようにして、休み休み家路につきました。母の顔を見た途端、意気揚々にと戦果を報告するはずが、泣きながら「重かった。」「足がだるい。」と訴えたのです。母からは「大きな貝だけ採ればよかったのよ。」と言われたのを覚えています。この思い出が私のトラウマとなって今でも潮干狩りに行こうとは思いません。

 この話を友人にしましたら、「今時は海の近くまで車が行くし、それより泣きたくなる程、貝の採れる海岸が日本のどこにあるの」と一笑に付されました。けれども、潮干狩り大嫌いの人間の私も貝を食べるのは別。立春を迎えると貝が待たれます。一年中、なんらかの貝が店頭に並んでいますが、スタートはやっぱり春。私にとって貝は浅春最大の醍醐味なのです。

 私の回りで採れるのは、アサリ、ハマグリ、マテ貝、トリ貝、アカ貝、アカニシ、ツメタ貝、アオヤギ、タイラギ等々。豊前海の遠浅に生息する貝ばかりです。最近は収穫量も減少し、市場で求めることが難しくなり、友人からいただくことが多くなりました。佐伯を中心とした日豊海岸は豊前海とは全く異なる貝の宝庫。ジンガラガッサ、サムライギッチョ、カメノテ、ホラガイ等々。

 大分県人として50年以上生活していながら食べたことも、見たこともない貝がまだまだ沢山あるのです。仲良しの「まあ姉」の話では「蒲江の貝の種類は日本一」、大分県は本当に凄い。面白い。今年も蒲江の美味しい貝を食べに。そして「まあ姉」の楽しい話を聞くために蒲江に行かなきゃと思っています。

総合監修 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成22年2月)

お酒との相性がぴったりのジンガラガッサ(ギンタカハマ)

水揚げ直後のサザエ

サザエの発送作業に大忙しの橋本正恵さん(赤い作業着)

こちらも美味なアカニシ

橋本さんが趣味にしている伊勢海老やアカニシの貝殻を使用したロウソク

坐来メニュー(貝よせ温鉢)

坐来メニュー(ぶりあつ飯)

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