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[食 Vol.42] 竹田市 / 原木キクラゲ」

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竹田市

原木キクラゲ

Vol.42
 竹田市は、大分県の南西部に位置し、くじゅう連山、阿蘇外輪山、祖母山麓に囲まれ、日に数万トンの湧出量を誇る湧水群と緑あふれる自然豊かな地域です。湧水の恵みや夏季冷涼な気象条件を活かし、米を中心に、カボスや椎茸、トマトやスイートコーン、豊後牛などを生産しています。また、岡城跡、武家屋敷、瀧廉太郎記念館などの史跡や文化財を多く残し、白水の滝、日本一の炭酸泉といわれる長湯温泉、雄大な久住高原などが観光名所となっています。

 今回は、そうした豊かな自然の中で、国内では珍しいキクラゲの原木栽培に取り組む「竹田原木キクラゲ本舗」の佐藤 精治(せいじ)会長を訪問しました。
 
 キクラゲは、キノコの一種で、漢字で「木耳」と書きますが、形が人間の耳に似ているから、干したクラゲのような食感があるからキクラゲの名称が付いたと言われています。食物繊維をはじめ、ビタミンB2・C・Dやカルシウム、鉄分などを豊富に含み、数少ない生でも食べられるキノコです。

 佐藤会長や会員が栽培するのは、アラゲキクラゲと呼ばれる品種で、キクラゲの中でも大型で肉厚です。キクラゲ自体は特に味や香りはないものの、火を通しても変わらないコリコリ感などが色々な食材と相性がよく、中華料理や和え物などに利用されます。

 キクラゲの国内消費量のほとんどは中国産の乾燥キクラゲです。佐藤会長がキクラゲの生産を始めたのは、中国野菜の残留農薬問題等もあり国産キクラゲの需要が年々高まっていた2年前。大手企業から栽培の薦めもあり、地域の林業家等23名で組織をスタートさせ、現在は45名が参加し、徐々に生産を拡大しています。

 消費者に感動してもらえるキクラゲを作りたいとの想いから、菌床栽培でなく、栽培技術が確立してない原木栽培にこだわったため、椎茸栽培ではベテランの佐藤会長でも、当初は栽培に適した原木も分からず失敗を繰り返したそうです。しかし、生育を毎日見守ることで、現在では、「適木(てきぼく)や適温も分かり、キクラゲの喉が渇いているかどうかまで分かるようになった。」そうです。

 地元の調理法は、相性が良い麺類との組み合わせをはじめ、フキや山椒の実と混ぜ合わせたつくだ煮などにしますが、特に生姜醤油で食べるキクラゲの刺身は食感が抜群。一度、食べたらその歯応えが分かりますよとのこと。今後は、焼いた場合の調理法や原木の周辺でワサビを栽培し、ワサビとの相性などの研究も考えていました。

 今後の構想は、原木キクラゲの一大産地化を図り、地域活性化の大きな柱にしたいとのこと。「生産者や生産量を増やすだけでなく、地域から人が離れ荒れる山林にキクラゲの適木を植林することで治山するほか、高齢者の生き甲斐対策として植菌させたり、生産所得を安定させ後継者が育つ環境を確保する仕組みを作り上げたい。」と意欲を燃やしていました。

 なかなか味わえない産地直送の原木キクラゲ、是非坐来大分でご堪能ください。(要予約。天候等により入荷がない場合もあります。)

 ○竹田原木キクラゲ本舗 TEL0974-68-3462(佐藤精治)

〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉

 五十年程前のことです。我家のもみじの老木が寿命が尽きたのか枯れはじめました。その樹に木耳が繁殖したのです。海岸育ちの母と私は、きのこの名前も分からず、その奇怪な形や色は不気味に見え、植木屋に処分してもらいました。後日、処分していただいたお礼に伺った時、ベテランの庭師さんから奇怪なきのこが天然の木耳と教えられ、無知を恥じると同時に、もう少し丁寧に観察するべきだったとか、料理してみるべきだったとか、後悔ひとしおでしたが後の祭りです。

 けれども、これを切っ掛けに木耳は私の関心食材の一つになりました。無味無臭、コリコリした歯応え、なんとなく主役になりにくいその姿。そして気付いたことは、だからこそ食材として面白いということです。
 今回、私の秘蔵レシピを紹介致します。勿論、木耳が主役です。

 その一、木耳のきんぴら
 戻した木耳に牛肉を加えてきんぴらにします。万人向きの美味しさです。

 その二、木耳の佃煮
 木耳の佃煮を作る時、蕗の薹(ふきのとう)を加えます。これは、通人の味です。

 その三、巻蒸
 けんちんと読みます。木耳や豆、栗の入ったくず寄せ風の和菓子です。大分県北の中津市一帯では冠婚葬祭の引き出物には欠かせないお菓子でしたが、最近は洋菓子に押され気味で元気がありません。発祥や名前の由来等、なかなか面白いものがありますが、そのお話しは又の機会に譲ることにいたします。どうしても知りたいと思う方はネットで検索してみて下さいませ。

 県産の原木キクラゲが出来るようになって、きっと大勢の料理好きが喜んでいることでしょう。私もその一人です。私の木耳料理を楽しみにしている多くの友人に胸をはって自慢できない部分がありました。それが外国産のキクラゲを使用していることです。国産のキクラゲを手に入れることは、とても難しいことでした。竹田で原木キクラゲが生産出荷される報は本当に嬉しい。

 私の木耳料理作りも益々レパートリーが拡がることでしょう。楽しみです。

総合監修 金丸佐佑子(平成22年8月発行)

原木キクラゲ

原木キクラゲのほだ場

生キクラゲを生姜醤油で

乾燥させたキクラゲ

キクラゲを子どものように想う佐藤会長

環境省の「名水百選」に選定された
河宇田湧水(かわうだゆうすい)

江戸時代の面影を残す武家屋敷通り

キクラゲを使った青菜とカマス一汐干しのカボス浸し(坐来料理)

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