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[食 Vol.43] 宇佐市 院内町(いんないまち) / 大分のんきどじょう」

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宇佐市 院内町(いんないまち)

大分のんきどじょう

Vol.43
 大分県北部に位置する宇佐市院内町、石橋の郷と呼ばれ、江戸時代の終わりから昭和の初めに架けられた石橋が数多く現存しています。また、少なくなったと言われる棚田も残されるなど、一昔前の佇まいを自然に感じられる地域です。

 今回は、そうした自然が多く残されている院内町で食用のドジョウを「大分のんきどじょう」の名称で養殖する日高暁彦(ひだかあきひこ)さんに話を伺いました。「大分のんきどじょう」と名付けたのは、ハウス内の水槽飼育で危機感がないのか、ドジョウが寝る時は、水面に浮いてお腹を上にするのんきな姿からだそうです。

 ドジョウは、昔話では滋養強壮のある食材として取り上げられ、各地で鍋や汁物、揚げ物などの郷土料理で紹介されています。また、旧来の宴会などでは、安来節に合わせて、ドジョウをすくう滑稽な姿を見かけるなど、誰もが身近に感じていました。

 漢字では、泥鰌と書くように泥や砂を好み、危険な時や水温低下の際に泥に潜って身を隠しています。めだか同様に、日本全国の水田や湿地に多く生息していたドジョウですが、ほ場整備や護岸整備で繁殖場所が減少し、水田や川などで全く見かけなくなりました。今では、国内産ドジョウは超高級魚であり、観賞魚にもなっています。

 川魚や野鳥の餌でもあったドジョウの減少は、他の生物の生存にも影響を与えると言われています。このため、平成15年に養魚場を設置した日高さんをはじめ、隣の安心院町(あじむまち)の有志が「おおいたどじょう村塾」を平成17年に設立しました。ドジョウの棲める環境を取り戻したり、大分のんきどじょうの養殖と加工品づくりなどで日本一の産地形成を目指し、取組を始めています。

 日高さんの養魚場は、ハウス内にコンクリート水槽を20基設置し、地下水を汲み上げ飼育しています。県内水面研究所と連携し、水槽に泥を入れない大量養殖に成功し、年間3t程を出荷できるようになっています。

 ドジョウは、カルシウムやビタミンDなどを豊富に摂取できる一物全体食の典型ですが、特に日高さんが育てたドジョウの身は泥臭くなく、骨も柔らかいため、地元の料理店だけでなく、東京のドジョウ老舗専門店「駒形どぜう」からも評価されています。また、佐渡のトキ保護センターから安全性と周年供給が評価され、国際保護鳥トキの餌などでも出荷されています。

 高い評価の反面、泥のない飼育では、ドジョウが気温や日射からデリケートな身を守れず全滅する可能性が高いため、24時間適温調整する必要があり、ご本人が病気になっても休めないそうです。

 しかしながら、日高さん曰く、「時間はかかるだろうが、ドジョウの住める環境を取り戻すとともに、大分のんきどじょうをブランド化し、地域振興の核になるよう取り組むのだから毎日が楽しいですよ。これからも全力で頑張ります。」と、抱負を語ってくれました。

 坐来大分では、10月13日から始まる「宇佐フェア」で、大分のんきどじょうをご用意していますので、是非ご賞味ください。(要予約。天候等により入荷がない場合もあります。)


 伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉

 野分(のわき)、二百十日という言葉を聞くと、私は思わずドキドキ、ハラハラ、ヒヤヒヤ、そしてワクワクしてきます。暴風雨は大嫌い。けれども、台風一過の翌朝はワクワク気分になります。

 六十年も前になりますが、大雨のせいで、我家の前の小川や田んぼ周りの水路は水が溢れ、上流の溜池から沢山の小魚が流れてくるのです。

 鯉、鮒、はえ、どじょう、川海老等々。普段、魚釣りや魚採りに縁のない私共女の子もこの時は別です。台所からザルを持ち出し必死ですくいました。みるみるうちにバケツいっぱいになります。鼻をピクピクさせながら友達と自慢比べです。

 その魚の行き先は??ところが、我家の食卓に並んだことはありませんでした。海辺近くに育った母のレシピに川魚料理はなく、おそらくご近所の方に差し上げたか、私の見てない所で川に戻したか。当時の私にとって食べることはどうでもよかったのです。

 その後、どじょう以外の川魚を食べる機会は度々ありましたが、長い間どじょう料理だけは縁がありませんでした。東京には、老舗のどじょう専門店があると聞き及んでいましたので、その機会を待っておりましたら、数年前その機会に恵まれました。

 味は勿論のこと、かば焼きの串の打ち方にしても見事を通り越して、まるで芸術品、更に驚かされたのは、そのどじょうが私の住む宇佐産であったことです。地元の私共が知らないところで、芸術品化して宇佐産どじょうは頑張っていました。

 宇佐の里山では昔から農作業の始まりや終わりに”どじょう汁”を食べる習慣があります。地元の私共はその食文化をたかがどじょうという程度にしか考えていなかったのです。食にかかわる者の一人として目から鱗が落ちると同時に、無知を知らされた老舗の料理でした。
 今後は、東京という目を通して、宇佐のどじょう食文化を再確認したいと思っています。

 総合監修 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成22年10月)

 ■「大分のんきどじょう」のお問い合せ先
   月ノ俣養魚場 日高 暁彦
   TEL0978−34−3857
   FAX0978−34−3858

大分のんきどじょう

日高 暁彦さん(向かって左の眼鏡を掛けた方)

生け簀で育つドジョウ

ドジョウ鍋

「鳥居橋(とりいばし)」(長さ55m、高さ14m)

「御沓橋(みくつばし)」(長さ59m、高さ14.7m)

宇佐神宮(国宝指定、八幡造りの本殿)

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