今回は、豊後高田市の温暖な気候で栽培される「なばな(菜の花)」を紹介します。
豊後高田市は大分県の北部に位置し、千年の時を超えて受け継がれてきた“六郷満山文化”や昔から変わらず残されてきた景観や文化遺産が多数あり、観光客が多く訪れます。また、「住みたい田舎ベストランキング」では、子育てのしやすさ、老後の医療介護体制、移住者支援制度などが高く評価され全国1位に選ばれるなど、大変住みやすい地域です。
春の食材として食卓を彩る「なばな」は、菜の花を食用に改良した品種で花が咲く直前のつぼみと茎葉が食べられています。京都では「花菜(はなな)」と呼ばれ「花菜漬け」が知られていますが、もとは切り花として観賞用に作られたものです。ビタミンが豊富で緑黄野菜のひとつとしていろんな料理に利用されています。
ちなみに大分県のなばな(花芽)の出荷量は全国5位。その殆どが豊後高田市で栽培されています。
取材にお伺いした大分県農業協同組合豊後高田事業部なばな生産部会 萩 俊美(はぎとしみ)部会長のお話では、「市内では、約150軒の農家が栽培し、総面積は20ヘクタール。11月から5月頃まで出荷されます。なばなは、成長が早く頂芽を取り除くと、側芽が次々と伸長しつぼみが着きます。寒い時期の栽培なので病害虫が発生せず消毒なども一切行っていないので、安心して食べて下さい。」とのこと。
取材にお伺いした日は既に収穫を終え、手際よくなばなのパック詰めをしていた萩部会長のお母さん。「収穫したなばなを長さ11.5?、一束180グラムに揃えて梱包します。収穫後も成長するため、出荷する際には成長を抑えるため保冷できる包材で梱包し出荷します。茹ですぎるとシャキッとした歯ざわりと香りがなくなり栄養価も少なくなるので、さっと茹でて水にさらすと苦みもとれて美味しいですよ。」とすてきな笑顔でした。
荻部会長は、「豊後高田市が、なばなの生産地としてあまり知られていないため、市内の旅館や学校給食などと連携して地元を盛り上げ、若手生産者が新規就農できるよう頑張りたい。」と力強くお話いただきました。
荻さんが真心込めて栽培した「なばな」を、是非坐来大分でご堪能ください。
「問い合わせ先」
○大分県農業協同組合 豊後高田事業部
豊後高田市玉津2073-2
TEL:0978-22-2279
〈伝承料理研究家 金丸佐佑子さんのお話〉
私は緑黄色の野菜を食べると幸せになります。身体のすみずみまでもが喜んでいるように思えるのです。緑黄色野菜はビタミン・無機質・植物繊維もたっぷり。これでも栄養士のはしくれ。そして五十年近く家庭科の教員として食教育に係わって来た私にとっては、緑黄色野菜の大切さをよく分かっているつもりです。
私の周りはいつも緑色野菜に囲まれています。秋の大根、人参、白菜、蕪等の間引き菜に始まって、小松菜、水菜、ホーレン草、春菊、高菜、ちんげん菜、なばな、野生の菜の花、ブロッコリー等々。端境期はつるむらさき、モロヘイヤ等に助けられています。自宅(工房)前の畑からの収穫とご近所さんからの頂き物で追いかけられる位です。
今回、何気なく食べていた「なばな」の出荷量が大分県は全国五位ときいてびっくりしました。ごく普通にあった緑色葉物野菜の一つでした。ポパイで有名なホーレン草や若い人に人気のあるサラダ用野菜のようにメジャーではありません。料理も主役ではなく脇役。私はもっぱら茹でたり、炒めたり、ごま和え、白和え、お浸し等普段着ぽいものばかりです。
とりわけ「なばな」はこった料理や主役をはる料理を作らなくとも美味しいのです。工夫しないで手抜きをしている私の言い訳ぽいですが。私は前者だと思うのです。又、別の意味で美味しさ以上に「なばな」は大好き。その理由はメジャーでなくとも普段着の料理であっても多くの人に愛されているからいい。でも本音はもう少し消費が増え、時々は主役をはりたいと思っているかもしれません。それはもしかして私の内心を「なばな」にダブらせているようにも思えるからです。
今夜こそ「なばな」主役の献立をと思ってキッチンに立ったはずなのに又「ごま和え」になりました。美味しいからこれでいいのです。
総合監修 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成25年3月)
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出荷前の「なばな」
なばな生産部会長
荻 俊美さん
パック詰めの様子
上段のくぼみに保冷剤を入れ生育を遅らせる包材
地元野菜を直売する「山里の味 小田原ふるさと市場」
荻部会長と伝承料理研究家 金丸佐佑子さん
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