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[食 Vol.65] 宇佐市長洲 / 勝ちえび」

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宇佐市長洲

勝ちえび

Vol.65
 今回は、宇佐市長洲地区の伝統的特産品「勝ちえび」をご紹介します。

宇佐市は、大分県北部に位置し、全国に4万社余りある八幡様の総本宮の宇佐神宮があり、広大な宇佐平野と漁業の栄える豊前海に恵まれています。また、今月から宇佐市初となるご当地映画「カラアゲ☆USA」が全国で公開されることとなっています。
 
 「勝ちえび」の名前の由来は、昔は干しえびの殻を取り除く時に「叩き棒」を使用し、その音がカチカチと音がすることから「かちえび」と言われ、勝負事や受験等の「勝ちえび」としての縁起物として親しまれています。

 取材にお伺いした、(有)上野水産代表取締役 上野幸一(うえの こういち)さんのお話では、「勝ちえびは豊前海で水揚げされた赤エビの干し物で、殻を取っているのでそのまま食べられます。また、酒のおつまみやひと手間加えて、酢の物、チャーハン、サラダのトッピングなど色々な料理にご利用できます。
 赤エビは6月から9月末までが最盛期で、1日に500kgの赤エビを加工処理しています。味付けは塩のみで、干すことでうま味が増し、本来の自然な甘味が口の中に広がります。
 現在、殆どが県内消費となっており、地元商店をはじめ、大分空港やトキハ本店などで販売していますが、多くの皆さまに食べていただけるよう今後は県外業者など新たな販路開拓を展開したいと考えています。また、「勝ちえび」のネーミングで縁起物というイメージが強いですが、通常の家庭料理などにも気軽に利用できるよう、PRしていきたい。」とお話いただきました。

 坐来大分は、8月21日にリニューアルオープンいたしました。
 リニューアルに伴いメニュー替えも行い、今月は「宇佐勝ち海老ちらし」をご用意しています。
 豊前海で取れた新鮮な「勝ちえび」を是非、坐来大分でご堪能ください。
 

■有限会社 上野水産
 代表取締役 上野 幸一 氏
 
  宇佐市大字長洲4287
  TEL:0978-38-0011


〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉

 私が生活している宇佐市長洲地区では、目下「かちえび」製造の最盛期を迎えています。六月から九月にかけて、長洲沖で獲れる赤海老は美味しいだけでなく、背腸がとれやすいのです。

 五十年前、大学を卒業する時、私の人生を決定付けた大恩人のゼミ指導教官へのお礼に、当地の「かちえび」を持参しました。四年間もお世話になった先生へのお礼にしては少々庶民的過ぎるかなとは思ったのですが、どうしてもこの味を味わっていただきたかったのです。試食された先生の第一声は「美味しい。日本一の味。」と絶賛して下さいました。調理学の権威の先生に褒めていただいたのです。本当に嬉しかった。持参したかいがありました。その時以降、『長洲の「かちえび」は日本一』私の思いは揺らいでいません。

 けれども、漁獲量の減少、外国産の進出、本物の味を知らない人の増加、販売や宣伝の力不足等が重なり、最盛期には二十軒以上あった海老舎(えびしゃ・加工工場を当地ではこう呼びます)も現在は三軒を残すのみとなりました。残念なことです。かつては我が家の二軒先にも海老舎がありました。製造時期には海老の匂いが我が家まで届きました。私は海老を食べることも、料理することも大好きです。この海老好きは幼い頃にインプットされたのでしょう。まさに私のソウルフードです。

 私の大好きな「かちえび」料理の一つに「かちえびちらしずし」があります。一般的な「ちらしずし」は白飯に合わせ酢を合わせ、具を混ぜるのですが、「かちえびちらしずし」は白米を炊く時に「かちえび」を同時に炊き込み海老の味をしっかり染み込ませた後、合わせ酢を合わせ、具を散らします。炊き込んだ「かちえび」、甘辛く煮た椎茸、甘く炊いたうずら豆や金時豆の煮豆、我が家の「かちえびちらしずし」に欠かせない三点セットの具材です。椎茸も「かちえび」も、豆も美味しいだけでなく保存が簡単、身近にあって少々高価。ハレの日の料理が手軽に出来ました。

 宇佐市を貫く駅館川は上流に天然記念物の「オオサンショウウオ」が生息しています。そこで育った椎茸、県下一の穀倉地帯宇佐平野で育った宇佐米や豆類、下って豊前海では赤海老を始めとして美味しい魚が収穫されます。これら以外に卵や季節の野菜がトッピングされます。「かちえびちらしずし」は宇佐が凝縮された料理です。数年前までは名前すらありませんでした。いろいろな方から作り方や料理名を尋ねられるようになり、私が勝手に便宜上「かちえびちらしずし」と命名。いつの間にかそれが定着したようです。

 NHKの朝ドラ「風のハルカ」でも「かちえびちらしずし」と紹介され全国デビューしました。今回は銀座「坐来」のメニューデビュー。名前すらなかった田舎料理が「坐来」の感性と技術によってどの様に進化しているのか。とても楽しみです。

総合監修
 生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成26年9月) 

水揚げされた赤エビ

赤エビの乾燥機

乾燥させた赤エビ

手作業で殻を取り除きます。

上野社長と金丸佐佑子さん

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