今回は、生産量で県内40%のシェアを占めている日出町の「ぎんなん」をご紹介します。
大分県のぎんなんは愛知県に次ぎ全国2位の生産量を誇っています。県内最大の生産地である日出町のぎんなん栽培は昭和57年頃から本格的に植栽が始まり、当時20戸余りであった生産農家も現在では60戸となり、毎年出荷量を伸ばしています。
一般的には、茶碗蒸しの具として重宝され、食材としてはどちらかと言えば脇役のイメージですが、地元ではいなりやちらしずし、かき揚げなどぎんなんを主役にした料理もあります。
ぎんなんの出荷時期は9月から12月ですが、JAべっぷ日出ギンナン部会では、数年前より8月の盆過ぎから出荷する「早出しギンナン」に取り組んでいます。
取材にお伺いした同部会の部会長 上野輝彦(うえの てるひこ)さんのお話では、「JAのギンナン部会(部会員41戸)は平成元年に発足し、共同出荷を始めました。部会の栽培面積は22ヘクタールで年間40トンから45トンの生産量となっています。県外への出荷はこれまで大阪市場を中心に行ってきましたが、今年からは試験的に東京にも出荷しています。輸送コストの問題がクリアできれば、販路拡大の可能性はあります。また、ぎんなんを使った加工品についてもJAを中心に現在、開発中です。これからは多方面にぎんなんを活用できるよう頑張りたい。」と力強くお話いただきました。
また、最近では、収穫後にすぐ洗浄するため、独特の臭いが少なくなり、料理にも使いやすくなっているとのこと。ビタミンが豊富で滋養強壮の効果も高いといわれており、今後は食材としての活躍の場が拡がることが期待されます。
現在、坐来大分では、「世界農業遺産認定地域メニューフェア」を開催中(11月末まで)。別府湾を望む温暖な地で生産された「日出ぎんなん」を是非、坐来大分でご堪能ください。
■JAべっぷ日出 ギンナン部会
部会長 上野 輝彦 氏
速見郡日出町大字藤原6080
TEL:0977-72-6746
〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉
いよいよ冬支度へ突入。秋の食材から冬の食材へと移りました。それにともなって料理も冬の献立へと。四季のある日本の料理「和食」はその変化していくさまが本当に楽しい。最近は流通の進化によって季節に関係なく世界中から食材が届くようになり、更に栽培技術の進歩によって四季と関係なく店頭に食材が並び、だんだんと季節感が薄らいでいます。折角、四季のある日本に住んでいるのですから勿体ないと思いませんか。先人から伝承されている「走り」「旬」「名残」「時無し」の料理の感動まで薄らいでいるように思えてなりません。
私は四季の味だけでなく、食材の色にも感動します。
60年も前のことです。母の着ていた和服「銘仙」の紫色の色を「茄子紺」と教わりました。紫の鮮やかな色と同時に「茄子紺」という響きにも感動したのです。酒井田柿右衛門さんが柿の色を出すのに苦労したと伝えられている柿の朱色。柚子の黄色も素敵です。秋の料理には欠かせません。香りだけでなく色も大切な要素です。唐辛子の赤も、食材としてだけでなくインテリアにも使いたくなります。採り損ねて黄色に熟れた苦瓜の中をご覧になったことがありますか。種のまわりに真っ赤な綿があります。まさに真っ赤です。
赤も黄色も紫も季節を問わずきれいですが、秋の食材の色は別格。ひたすら色に専念しているように思えてなりません。秋の澄んだ空気がそう思わせるのかも。そしてとどめは「ぎんなん」の翡翠色。緑色の野菜は沢山あります。グリーンピース、おたふく豆、枝豆等々。でも、ぎんなんの翡翠色は半透明でまさに宝石です。私のぎんなん定番料理には「茶碗蒸し」「蕪蒸し」「土びん蒸し」「煮染め」「ぎんなんごはん」があります。ぎんなんは主役ではないといいますが脇役でもありません。料理が出た時まずぎんなんに箸が行きます。その存在感は凄いと思いませんか。
先日、姪と農産物直売所に行きました。その折、姪が沢山のぎんなんを買い求めていましたので「そんなに沢山どうするの」とたずねましたら、彼女の答えは「このところ、ぎんなんご飯を五回炊いた」とのこと。「だって皆さんとても感動するのよ」さすが私の姪です。ぎんなんの翡翠色は美味しさ以上に心に訴えるものがあるように思います。「坐来」のぎんなんはどんな伝わり方をするかしら。
総合監修
生活工房゛とうがらし˝金丸佐佑子(平成26年11月)
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早出ぎんなん「喜平」
高圧皮剥き機の使用で作業が改善されました
ぎんなんの乾燥機
JAべっぷ日出ギンナン部会 上野部会長
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