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[食 Vol.76] 宇佐市 伝承料理研究家
 生活工房とうがらし
  主宰 金丸 佐佑子  / ありがとう 〜感謝の心〜」

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大分|食|大分の食物

宇佐市 伝承料理研究家
 生活工房とうがらし
  主宰 金丸 佐佑子 

ありがとう 〜感謝の心〜

Vol.76
 この欄に駄文を連載するようになって随分となります。ぼちぼち卒業を考えているのですが、その前に独断と偏見にみちた私の仕事や、考えを述べることに致しました。

 終戦後、私共日本人は食べ物に大変不自由し、「せめて子どもたちにはひもじい思いをさせたくない」の思いで頑張ってきました。豊かな食、それが私共の願いでした。農業技術の進歩や品種改良等は美味しい食材を量産化、食品加工業の進歩や流通業の発達は世界各地から食品を簡単に手に入れることを可能にしました。私共の願っていた豊食化の実現です。けれども足を止めて現実を見ると、現在の食は豊食を超えて「飽食化」。それどころか「崩食化」しているように思えてならないのです。朝食はサプリメント、昼食はドーナッツ、夕食はチョコレートと広言する若い人もいます。私からすると広言すること自体をはばからない風潮が怖いのです。日常食を大切にすると言っても、日常食そのものの概念が違うのですね。

 私は五十年以上、食に係わって来ました。食に関してはかなりやりつくしたつもりでしたが、そう思いつつもすっきりしないものが心の隅にあるのです。それが最近やっと分かりました。NHKの朝ドラを見ていたときのことです。終戦後の食卓風景。毎日、毎日「すいとん」、一つの卵を譲り合う家族の姿がそこにありました。美味しいとか珍しいとかの世界ではありませんが、その茶ぶ台には感謝やお互いを思いやる心が溢れていました。私共は豊かさと引きかえに、これらを忘れつつあるような気がしたのです。「食べ物を粗末にしない。感謝する。」
 そうだ。「すいとん」を作ろうと思いました。「すいとん」を作るなんて簡単なことです。ところがいまだに実現できていません。我家の台所には山のように食材が溢れ、冷蔵庫の中にはぎっしり、消費期限や賞味期限に追われる毎日の中、「すいとん」を家族に振る舞ったとしても私の意図は伝わりそうにありません。

 「御御御付け」=おみおつけ=みそ汁」なんて大仰な料理名でしょう。これを読める人は多くありません。でも深く読むと、いかにみそ汁に感謝の気持ちを表しているかに感動します。お釜、お茶碗、お箸、御飯、お汁、お雑煮等々、沢山の道具や料理に感謝の気持ちをこめていると思いませんか。カタカナ文字の道具や料理には「御」や「お」も付いてません。日本が豊かになってから、入って来たものだからです。豊かになるということはこういうことなのでしょうか。なんとか「すいとん」作りを実現しなければ。孫たちに食への感謝、粗末にしない心を伝えなければ。

 最後になりました。この度の熊本、大分地震では沢山の方にご心配、ご支援をいただき心より感謝致しております。大分は熊本ほど被害は大きくありませんでした。私の周辺は殆ど被害はありませんでしたが、竹田、由布院、別府の観光地では完全に復興したにもかかわらず風評被害で苦しんでいる由、是非是非、大分にお越し下さいませ。坐来大分では大分の食材を使ったお料理を出させていただいてます。大分を是非、ご支援くださいませ。
 皆様のご支援を心より感謝申し上げております。

             平成28年8月吉日

生活工房とうがらし

しいたけ栽培のほだ木(ムカデ伏せ)

しいたけ栽培のほだ木(井げた積み)

裏池に咲く蓮の花

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