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[食 Vol.79] 佐伯市 / かぼすヒラメ」

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佐伯市

かぼすヒラメ

Vol.79
 佐伯市は、大分県の最南に位置し、潮流の速い豊後水道に面し、海辺には”浦”と呼ばれる入りくんだ小さな湾が点在し、天然の好漁場であるばかりでなく、ヒラメやブリなどの養殖業が盛んなことでも知られています。

 今回は全国トップレベルの生産量を誇る養殖ヒラメの中でも更なる美味しさを追求した「かぼすヒラメ」の取材のため、佐伯市蒲江の下入津ヒラメ養殖組合の組合長 森岡道彦さんを訪ねました。

 「かぼすヒラメ」は、大分県特産のかぼす果汁を1%添加した餌を、出荷前に20回以上給餌し、1kg程度まで育ったものを指します。餌にかぼす果汁を添加することで、かぼす効果で変色を押さえ、さっぱりと臭みの少ない肉質になることで大分県の新たなブランド魚として誕生した「かぼすブリ」をヒントに生まれました。

 県内外で行う試食会で「かぼすヒラメ」を味わった皆さまから『さっぱり』『すっきり』『くさみがない』と大変好評で、特に肝とえんがわの美味しさは絶品との声が寄せられるとのこと。
 大分県農林水産研究指導センター水産研究部の研究結果からも、かぼすの香り成分であるリモネンが肝やえんがわに蓄積されていることが確認されています。

 また、美味しさだけなく安心・安全にも特に配慮し、食中毒を引き起こす可能性のある「クドア・セプテンプンクタータ」という新種の寄生虫への対策については、県のガイドラインに沿って、種苗の仕入れ、養殖の過程、出荷の際と三段階にわたる検査を実施しているとのこと。

「昔は高級魚として料亭などでしか味わえなかったヒラメが、養殖技術などの向上により安定して市場を通じて食卓にも供給できるようになってきました。
 美味しいかぼすヒラメをいつでも安心して食べて欲しいため周年で出荷してますが、冬が最も脂が乗りつつ身が締まるのでお勧めです」と笑顔で語る森岡さん。

 稚魚から出荷まで10ヶ月以上、「ヒラメ小屋」と呼ばれる陸上の養殖いけすの中で一尾一尾箱入り娘のように大切に愛情込めて森岡さんたち生産者が育てた「かぼすヒラメ」を、是非、坐来大分でご堪能ください。

【坐来大分の「かぼすヒラメ」を使用したメニューは期間限定ですので、予めご了承願います。】

■かぼすヒラメの問いあわせ先
 大分県漁業協同組合下入津支店 
  〒876-2302
   大分県佐伯市蒲江大字西野浦1637−2
   電話:0972-42-1611



〈伝承料理研究家 金丸 佐佑子さんのお話〉

 〜鯛や鮃〜

「鯛や鮃の舞い踊り〜〜〜」。小学生の時、読んだ日本童話「浦島太郎」の一節です。主人公は海岸でいじめられていた海亀を救ったお礼に竜宮城に招かれました。おいしいご馳走、おいしいお酒、楽しい音楽、そして鯛や鮃の舞い踊り等。
 この童話にはいろいろな教訓が込められていると思うのですが、子供の頃の私にとって大きな感動を受けたのは、冒頭の「鯛や鮃の舞い踊り〜〜〜」の一節でした。
 漁師町に住む私は同年代の子供より魚の名称や料理に詳しかったと思います。鯛や鮃は他の魚とは異なり別格なのだと。その後、「鮃左目、右鰈」「鮃大口、鰈小口」等も学びました。鮃と鰈はなかなか識別するのに苦労します。その見分け方です。

 以前、孫娘に指摘されました。「おばあちゃんが鮃や鰈を料理する前には必ず鼻歌を歌っているね。」と。「鯛や鮃の舞い踊り、鮃左目、右鰈、鮃大口、鰈小口」をメロディ化して勝手につぶやいているらしいのです。
 別格の高級魚を料理する前の気分の高揚なのだと思います。刺身、昆布〆、汁物、煮付け、唐揚げが私のレパートリーですが、刺身や昆布〆はなかなか手強い。養殖の「かぼすヒラメ」は料理に合わせたサイズが手に入ります。庶民の食卓には天然ものだけだとサイズは当日のめぐり合わせによりますから、五枚おろしや、縁側を取るなんて、私には自信がないし、それ以上に面倒くさい。となるとついつい煮付けや唐揚げになってしまいます。
 
 ところが、山育ちの夫は煮付けや唐揚げは苦手でした。その理由は鮃や鰈は器量が悪い。目が片寄っていて上目遣いは嫌だというのです。
 魚の器量よしの基準は、鰤(ぶり)、鮪(まぐろ)、鯛(たい)、鯖(さば)や鰯(いわし)は魚形がよいとのこと。海底に住む底魚はどうしても上目遣いになると思うのですが、そんな訳のわからない理由には付き合っていられません。そこで私の大好きな煮付けになります。
 刺身になる新鮮な鮃の煮付けは切り口が盛り上がり、皮がはじけます。料理する前にこの味を想像して鼻歌が出るのでしょう。漁師町に育った人間なら分かっていただけると思うのです。

 養殖の「かぼすヒラメ」が普及されると本当に嬉しい。天然にたよらなくても新鮮な鮃が手に入りやすくなったら、私の鼻歌がいつも出るかもというより、当たり前になって歌うこともなくなるかもしれませんね。

総合監修
 生活工房とうがらし 金丸 佐佑子(平成29年2月)

かぼすヒラメ

下入津ヒラメ養殖組合 組合長 森岡道彦さん

いけすの中のヒラメ

販売窓口:大分県漁業協同組合下入津支店

出荷の際、ロットごとにクドア検鏡検査を漁協支店で行う

「ヒラメ小屋」と呼ばれる平屋づくりの養殖場

餌は、稚魚に1日3回、成魚には1日1回与える

「かぼす果汁」を農協から仕入れて餌に配合する

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